平素は、「奈良県住みよい福祉のまちづくり」をめざし、奈良県民への福祉向上に努力さ
れていることに対し敬意を表します。
社団法人日本自閉症協会奈良県支部は平成10年発足以来、5年目を向かえました。
奈良県内に住む※2,880人の全ての自閉症児者が充実した人生をおくるための支援確立
を目標に、県内の自閉症児者の福祉向上のため活動を続けています。
昨年、厚生労働省が自閉症者・発達障害支援センター設置を打ち出し、文部科学省は自
閉症についてはこれまでと異なる教育的対応を必要とする考えを示すなど、国レベルでの
自閉症に対する関心が高まっています。奈良県におきましても、我々の活動に関心を寄せ
て頂き、ことに、昨年平成13年社会福祉医療事業団の助成により取り組んだ「自閉症児
者支援ボランティア養成事業」におきましては、後援して頂くと同時に、会場確保等でご協
力頂きありがとうございました。
現在、自閉症児・者の多くが、様々な問題行動を呈し、障害児・者本人もその家族もその
対処に大きな困難を抱えています。奈良県で自閉症に対して、総合的で一貫した諸施策を
医療・福祉・教育・就労にわたって推進・実現していただくことを目指し、以下の要望をいた
します。
つきましては、前回平成10年12月21日付回答の要望項目を踏まえ、その後の社会変
化およびこれまでの経過を踏まえ、誠意を持って回答されるよう要請します。
※
平成14年3月1日奈良県総務部統計課発表の県人口1,439,907人に現在世界的な疫学調査で広く認められている
自閉症発生率20/10000(500人に1人)をかけ算した数です。
要望事項
1. 障害者基本法の附帯決議、「てんかん及び自閉症を有する者並びに難病に起因する
身体又は精神上の障害を有する者であって長期にわたり生活上の支障があるものは、こ
の法律の障害者の範囲に含まれるものであり、これらの者に対する施策をきめ細かく推
進するよう努めること」を完全実施をされたい。また、奈良県障害者福祉に関する新長期
計画に基づく障害者施策は自閉症も対象になっていることを確認してください。
2.療育手帳の判定基準に当たってはIQ70の知的基準にこだわらず、周辺にいる高機能
自閉症やアスペルガー症候群(知的な遅滞のない自閉症)等への障害の困難性を適切に
評価し、社会適応が極めて悪く就労等が困難な自閉症児者への対策を強化してしてくださ
い。
3.奈良県にも※自閉症・発達障害支援センターが創設されるようお願いします。なお、設
置の立案及び決定にあたっては、社団法人日本自閉症協会奈良県支部から直接ヒヤリン
グをしてください。
※平成14年3月27日参議院通過の事業、初年度全国で8カ所
4.奈良県心身障害者リハビリテーションセンター以外に自閉症児・者専門の「発達障害総
合支援センター」・「自閉症児・者療育センター」(仮称)などの関係施設をつくり、就学前、就
学後、成人期にわたり一貫して指導や援助・相談を受け入れられる体制をつくってください。
またその中に自閉症専門の療育部門を設置してください。そこには、自閉症児・者に対し
充実した診断・評価機能を持たせるため、自閉症等発達障害に精通した医師(精神科医、
小児科医)臨床心理士をこのセンターに専属配置してください。
5. すべての教育機関で自閉症児・者が最良の教育を受けれられるよう以下のような条件
整備をしてください。
〇自閉症児が在籍する学級で指導の質を高めるため介助員制度を導入し、それぞれの細
かいニーズに適切に対応してください。
〇自閉症児教育の研究及びその指導法の普及に努めてください。そのために、自閉症専
門の療育を実施する専門機関を整備してください。前回解答書にある、動作法、教材教具
の工夫のみならず、TEACCHプログラム等の世界的に実践され成果が確認されている療
育及び教育を行ってください。
〇自閉症に対する教職員の専門研修を強化してください。適切な人材に対し海外視察研
修を実施するなどして県内に専門家を養成して下さい。
○
自閉症児に対応できる障害児学童保育を設置し、働きたい母親の社会参加を支援し
てください。
○
県内の全ての学校において、高機能自閉症やアスペルガー症候群の実態調査を実
施して下さい。
○
高機能自閉症やアスペルガー症候群・学習障害・注意欠陥多動性障害の人の教育
は、障害に配慮しつつも、発達レベルにふさわしい教育が保障されるよう市町村を指導
して下さい。
6. 自閉症者のための職域開発援助事業に取り組んでください。そのため、就業実態調
査の実施、及び、自閉症者の適職の研究、職域の開拓などをしてください。
7. 自閉症の人の民間企業における雇用拡大を図るとともに公的機関においても採用し
てください。また、自閉症者雇用企業への助成金制度の適応をしてください。
8.自閉症児者を対象とした就労支援センターの設置をしてください。また、自閉症者の就
労を援助するジョブコーチ事業を実施してください。 さらに、 重点公共職業安定所に自閉
症に関する専門指導員を配置してください。
9. 知的障害を伴わない高機能自閉症やアスペルガー症候群の人について、相談事業を
行い就労支援及び生活支援に取り組んでください。
10.今回(平成15年4月から発足)の支援費制度が、自己決定の得意でない障害を持つ
自閉症者に、不利にならないよう、関係機関を指導してください。
11.自閉症者の在宅支援が行える環境づくりにつとめてください。
12.自閉症の人のための高齢化対策について、調査研究してください。
13.自閉症の人のための青年後見制度を充実してください。
14.授産施設、福祉作業所等の福祉就労施設では、自閉症に詳しい指導員・相談員を配
置するよう市町村を指導してください。
15.福祉的就労施設に自閉症の困難性に応じた職員の加配ができるよう、県から自閉症
者のいる施設に適切な援助や補助をしてください。
16.自閉症児者の一時緊急保護をはじめ、レスパイト、デイサービス、ショートステイ・ホー
ムヘルプ・ガイドヘルプできる環境を全県下につくってください。そのため施設職員の自閉
症理解への研修と市町村への実施促進のための補助をおこなってください。
17.全国のほとんどの都道府県は、自閉症協会の支部活動に助成金などをだしておられ
ます。奈良県支部の5年間の活動実績を正しく評価し、今後の活動の充実による奈良県
障害者福祉の向上のため適切な助成をお願いします。そのための手続の方法・時期等を
示してください。
18.自閉症協会奈良県支部からの県市町村各部署への必要な文書送付に際しては、県
庁総務課収発室のポストを使用させてください。