きずなへ
第8回自閉性障害児者の発達講座平成12年2月20日大和郡山市福祉会館でのレジメ
『自閉性障害児・者の発達課題と教育』
全障研大阪支部 副支部長 高橋 宏
○生活年齢から考えた発達課題表
・自閉性障害児者は、情緒障害ではなく、統合機能障害・認知障害だという説が定着して
います。自閉性障害児者の10年先を見通して、今何を身につけなければならないのか
を明らかにすることが、これからの自閉性障害児者の発達の鍵となると思われます。
・最新の医学的な研究によれば、自閉性障害はただ一つの原因ではなく、症候群ではない
かという考えが、世界でも日本でも多くなっています。また、最近はカナータイプとア
スペルガータイプ(アメリカなどでは主に高機能自閉性障害と言われている)とに、自
閉性障害は分けられて論議をされることも多くなってきています。
・CTやMRI(核磁気共鳴映像法)での研究や、事故死した自閉性障害児者の脳の解剖
の研究等から、多くの自閉性障害児者に、小脳や大脳辺縁系や扁桃体や前頭葉に異常が
認められたという報告があり、自閉性障害と脳のこの辺りの異常が、密接に関連してい
ると指摘されています。
・この課題表をまとめるまでには、100人以上の自閉性障害児者の実例報告と、多くの
実践者による20年以上にわたる実践報告等を検討して、高橋宏(大阪)西田清(奈良
)の二人が10年前に表を作り、以後毎年新しく付け加えてきたものです。
※
別紙・生活年齢から考えた発達課題表
(講演中の高橋 宏 氏)
1.幼児期から小学校低学年まで
(1)生活上身につけさせたい力
@外でたっぷり遊ぶ
A生活リズムの確立
B身辺自立
C楽しい遊びを保障
D偏食などについて
(2)労働の能力につながる力
@体全体の幹になる部分を鍛える
A足腰、手等をバランスよく発達させる
B足持と手指を発達させる
C共感関係を大切にして、2〜3人の集団と遊ぶ
(3)コミュニケーションのカ
@第2者の確立と拡大
A受容、優しさが必要な時期
B場面の切り替えの弱い子には、強い提示も必要
C感情表現も教える必要
D言葉を必要とする生活を
2.小学校中学年から小学校高学年まで
(1)生活上身につけさせたい力
@○○だという迫り方でなく、理解できるまで待ってやる
Aパニックを恐れない
B学校などの生活に見通しを持たせる
C確立したパターン化を崩して、幅を広げる
D多動がおさまる
E好きな事、こだわりを利用して趣味へと発展させる素地を
F愛情をそそげる小動物を飼う
(2)労働につながるカ
@本物に近いものを使ったごっこ的な活動を通して、物を作る意欲を
A家庭の一員としての任務を持たせる
B幼児期に出来なかった体験をさせる
Cお手伝いを、目で見ただけで理解できるように設定
D楽しさ+目的を持った遊びを保障し、生さていく上で必要な基本的な能力と技能を
(3)コミュニケーションのカ
@言葉でけでなく、物をささえに入れて、理解を促す
A見えない事やなぜ、どうしては、絵や言葉、具体的場面の設定で
B読み聞かせや絵を描くことで、言葉の理解を
Cパターンを崩すときには、事前に説明を
D2、3語文で意思を伝える 発語の無い人は文字や絵カード写真等で
3.中学都から高等部まで
(1)生活上身につけさせたいカ
@労働ができる体力づくり
A働く意味を、自分で分かるように
B性教育をきちんと分かりやすく
C思春期の体の発達と自我の意識のずれから、新しい問題行動も
(2)労働の能力につながる力
@遊びから労働へ 玩具から道具へ
A生活の力をつける
家族の一員としての位置づけと家庭内労働の保障
B道具を使いこなせる力を
C作る活動を十分に保障
D最後までやりきる力と意欲を
(3)コミュニケーションのカ
@幼児期の生活経験が、思いやりの言葉として出てくる
A基礎的な知識と、幅の広い教材を使って教科教育を保証する
B友達を求めようとする力の獲得
C絵や日記で自分の思いや要求を表現できるように
4.思春期から青年期へ
(1)生活上身についさせたいカ
@応用力がつき、こだわりがすくなくなり、落ちついてくる
A好きな人ができる 愛情表現や交際の仕方も身につけることの大切さ
B自由時間を、趣味やスポーツで豊かに過ごす
C動物を愛情と責任を持って飼育する
D生死を理解することがでさるようになる
(2)労働の能力につながる力
@意欲的な生産、労働へ
A発想→計画→実行→評価という労働の過程への参加
B自分の働いた賃金で、生活が豊かに
責任感という新しい概念の獲得と労働への意欲
C自他の区別ができる
(3)コミュニケーションのカ
@今までに獲得してきた基礎学力を、生活のなかで使える力へ転換する
A実生活で言葉を使って、生活に必要な物を貰いに行く
Bキイバーソンと自分の生活のプログラムを作る
きずなへ