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障害児の発達と障担教師の役割
(新しく障害児学級の担任になられた先生方等へ、体験的な障害児学級経営の一提案)
奈良県磯城郡田原本町立南小学校 障害児学級担任 西田 清
1.学級作り
(1)教室の環境
他の子どもが見ても、入りたくなるような、明るい、綺麗な教室作り。日あたりのよ
い、子どもたちが外にも出やすく、職員室にも近い場所で、通常学級の子どももよく
通る場所。考え方の基本は、子どもを学校に合わせるのではなく、子どもの状態に応
じて、学校を子どもたちに合わせて変えていくことである。
(2)小集団の保障
小集団の中での学び合いが、発達を保障するのに非常に大切なので、一人とか二人の
場合は、他の種別の障害児学級や、近隣の障害児学級等との合同学習を設定する。
現任校では、4学級あるので毎朝1時間目は、合同の授業をしている。LD児やAD
HD(注意欠陥多動性障害)児等も、大集団のなかでは刺激が多すぎて落ちつかない
が、小集団のなかでは適切な刺激なので、落ちついて授業に参加できる。
(3)教師集団の確保
・障害児学級の担任として、一番困りさみしいことは、学校で障害児学級が単学級しか
無いときである。分からない事や困難な事が次々と出てくるのに、心を開いて相談で
きる同僚が居ないか少ない。別の他の先生方が、その人を疎外しているわけではない
のだが、取り組む課題に差がありすぎるために、話がかみ合わなくなるのである。
そんな時には、学校長や教頭等は、常にその先生の相談相手になったりするよう、気
を配るべきである。
・また、障害児教育部会を組織して、日常的に障害児学級の担当の先生の悩みの相談等
に応じられるようしたり、その外にも学校全体の中で困難な問題を抱えている子ども
たちに目を向けられるような体制を作っておくべきである。
また、持ち時間数でも、教材の手作りや家庭訪問、休み時間も休憩が取れない子ども
を担任している場合などがあるので、他の先生方よりは、持ち時間を滅らしてやる等
障害児学級担任はなかなか言いだしにくいので、管理職や教師集団で配慮する必要が
ある。
2.障害に学ぶ教育の創造
子どもの障害をしっかりとつかみ、遊びを保障し、興味を持たせる教材を使い、学習に
集中出来るようにする。子どもは、入級したことで学習内容がよく分かるようになり、
喜んで学級に入ってくるようになる。その事が障害児学級存在の一番の値打ちである。
(1)子どもと遊ぶこと
発達の遅れた面を遊びに置き換えて、子どもの自発性を大切にしながら、遊びながら
発達を促す。集団での簡単なゲーム等も取り入れて、社会性を身につけることが大切
(2)手指の操作を重視する
少し手を加えるだけで変化する素材(砂や粘土や粉等)や、折り紙、ハサミを使った
教材(作ったあとすぐにそれで遊べる)等、指を十分に使う遊びを重視する。
(3)絵本の読み聞かせ
まだ言葉では内容が十分に伝わらない子どもたちには、絵本の読み聞かせや絵本の色
ぬりをして、遊びながら内容を理解できるようにする。紙芝居にしたり、動作化をし
たりして、お話の世界に十分に入り込ませ、やがてイメージが出来るようにする。
(4)絵で思いを語らせる
自閉性障害児など、話し言葉のない子は、心の中の表現を絵で表すことが多いので、
重視をして取り組んでほしい。人間の言葉の表現の発達は、絵→絵文字→文字と言う
ように発達してきた。幼児期に、絵を描くよりも先に文字を教えこまれた子は、イメ
ージの貧弱な子になることが多い。今、話し言葉がなかなか出なくても、イメージ豊
かに絵を描ける子は、理解言語が非常に豊かであり、やがて言葉が出てくる時期にな
ると、豊かな言語表現ができるようになる子が多い。絵は、言葉と同じにように大事
な表現手段であるので、もっと重要視して取り組んでほしい。
(5)絵日記や一口作文(教師が書きとめる)
文字が書けない子は、絵で表現させる。また、○○△×等の記号などで作文を書いた
つもりの子は、教師や親がその時の言葉で置き換えてやれば、自分の行動がそういう
言葉や文字で表現されるのだということが理解でき、自分も書いてみようと意欲がわ
き、やがては文字で表現できるようになる。
(6)教科の指導
・子どものつまずいた所から出発する。親の抵抗もあるが、学年にはこだわらない。
ただし、子どものプライドもあるので、その点も考慮して教材を組む事は大切な事で
ある。計画性のある、見通しを持った、系統だった指導をする。
一人一人の発達に応じた指導を考える。民間サークル等のすぐれた実践なども、どん
どんと取り入れ、指導に幅と深みを持てるようにする。
・おもちゃ屋や本屋めぐりをして教材を探す。障害児教育は、情熱とアイディアが無い
と、子どもの発達を保障する事はなかなか出来ない。
3.実践と理論を先輩や保護者から学ぶ
(1)先輩の実践や話を聞き、自分の心の糧とする。障害児とは、その教育内容とは、どの
様な本があるのか、保護者の願いなどをどの様に汲み上げていくのか。
(2)他の障害児学級や養護学校などの授業や研究会へ参加して、様々な取り組み方を知る
(3)新任研や民間の研究団体、組合の教育研究集会など色々な所に参加して、自主的に学
びとる。
(4)最新の医学的な理論や、教育実践を学ぶ事が必要である。実践が自分の独りよがりに
ならないためにも、過去の実践から学ぶだけではなく、マスコミの話題にも注目して
世界の最新の医療や心理学などの理論を学ぶことが大切である。
(5)とにかく、あらゆる場所で貪欲に、他の人の実践を知り、自分のものとして消化する
ことが、自分の力量を高めることになる。障害児教育で培った力量は、通常学級での
困難に出会ったときにも必ず役に立つ。
(6)教師の心構えとしては
・本で学んだり、体験談を聞いたりして参考にはするが、常に自分自信で子どもの問題
点を発見し、それを解決するための新しい方法を考え出し、実践して反省をし、成果
と欠点を見つけることである。そういう主体的な考え方や行動を、いっも自分自身で
意識的に持っていないと、ある一つの療法を機械的に取り入れて他人にも強要したり
他人の批判が耳に入らなくなったりする事が起こるので、注意が必要である。
・子どもにとって有効であるという事が分かれば、既成の概念にとらわれることなく取
りいれながら、物事をいつも点検し、発達的に見ていくことが大切である。そうする
ことで、子どもだけでなく、自分自身の発達を保証する事につながっていく。
4.子どもの変化を見つける力量をつけるため
(1)子どもの観察ノートをつける
毎日、どんなに忙しくても一人について2〜3行は記録をつける。あまり詳しく書く
と後が続かない。1ヵ月か1学期位経ってからまとめてみると、かすかな変化が分か
り、教師や親の励みになり、子どもをほめるきっかけになる。そこから、個人の発達
課題を見つけることができる。学期ごとにまとめて、保護者に知らせ、話し合うとき
の資料にもできる。
(2)連絡ノートの活用
・学校での時間割や、学級でした教科の内容や、その日の出釆事などを簡単に書く連絡
帳をプリントし、親にも気軽に家での様子を書いてもらえる位の分量にする。
必要最小限で、長続きするものがよく、親からの返事がもらえることが大切である。
・親からの意見や悩み、また教師の思いが綴れるような、連絡ノートだと長続きする。
保護者からの返事が無いのが、教師のやる気を無くさせる一番の原因になるので、そ
の事を保護者の方にも理解をしてもらっておくことが重要である。
特に、言葉のない子や自閉性障害児の場合、この連絡ノートを通して学校と家庭との
教育が一貫できて、子どもへの対応などの混乱が少なくて済む。
(3)学級通信のこと
毎週、子どものしたこと、作文、学校行事、教師の意見や父母の返事などを載せて発
行する。学級の子ども全体のことを知らせたり、こんな課題があるなど、共に協力し
てもらうために出す。(少人数の場合には、連賂ノートで事たりるので出さないが)
(4)写真やビデオで記録する
日常の学習の様子や作品、行事など写真やビデオで残しておくと、意外なときに役立
つことが多い。親に学校での様子を懇談会などで見てもらったり、発達の記録にもな
るし、校内の障害児の研修会などにも使用して、他の教師の理解を深める事も出来る
1年間の写真などは、最後にアルバムにして持って帰らせて、楽しい思い出にする。
(5)子どもの作品を残す
子どもたちの作った作品を、すぐに返してしまわないで、1年間の変化などを確認す
る。教師自身も、保護者と作品を通して子どもの発達や変容を確認して、お互いの意
識が高まるような返し方をする。
5.生き生きとした、学級作り
(1)教師は、子どもと親の生きた教材
生き生きとした子どもを育てるには、まず何よりも、教師が生き生きとしなければな
らない。どのような理由から障害児学級を担任したとしても、担任した以上ベストを
つくすべきである。
・子どもの発達の手助けをするのが教師の仕事であり、保護者の仕事でもある。特に、
教師は親の良き相談相手にならなければならない。親とともに自分も発達する努力を
しないと、足をすくわれることがある。なかなか、親と教師は理解し合うのは、簡単
にはいかないが、自分が障害児教育(通常学級でも同じ)などについて、研究する努
力がないと、親から駄目先生と言われかねない。
・子どもが教師や保護者から受ける影響は、通常学級の子どもよりはるかに大きい。
例えば、私の教えていた子が、次には女の先生の担任になったとたん、細い高い声を
出して家で本を読むようになったという。お母さんは「先生の与える力って、本当に
大きいんですね」と言っておられた。
(2)楽しい学級にするアイディア
障害児学級の経営で大切なのは、やさしさと辛抱強さと、研究心と、それと何よりも
大切なのは、頭(考え方)の柔らかさではないでしょうか。そして、子どもたちの行
動から、常に新しい発見と驚きを見つける努力が、教師や保護者を育てることになる
子どもの心と体をゆさぶる取り組み、障害児教育はアイディアの勝負であるという面
が大きいと思う。
@子どもとともに遊びきる
子どもの心の発達状態まで教師がおりて、子どもと教師が遊びきる。これは簡単な
ように見えるが、非常に難しい。差別されたり、仲間外れになったりした経験があ
まりない、比較的恵まれた環境のなかで育った人の多い教師にとっては、子どもや
保護者の思いを理解するのは困難なことが多い。教師としての体面をかなぐりすて
子どもの側に近づくことの苦しさ、私も最初は、どうしてよいか分からずに、ノイ
ローゼになってしまった苦い経験を持っている。
子どもと遊びながら、常に子どもの遊びと教育どう結び付けていくのかを考えるこ
とが、教師の仕事である。オクマジャクシ、カニ、チョウ、ふな、バッタ、カエル
取り、柿取り、みかん狩りなどをして、理科の学習や絵、詩、作文、日記などの指
導に役立てる。遊びに幅のない障害児などには、生活経験を豊かにする為にも、教
師が遊びを組織してやる必要がある。
A遊びを発展させて、10年後には自立できる力量も持った子に
幼児期の頃から子どもの実情をきちんと押さえた上で、10年後ぐらいにはこのよ
うになってはしいという目標を立てて療育をする。教師は、その具体的な目標と方
法を保護者と協力して設定する。
簡単なお手伝いから初めて、高等部を卒業するころまでには、身辺自立と家庭内の
労働は全部出来るように援助をしてやる。そのためには、長いスパンで子どもを見
ることが大切である。子どもが就労出来るようになるかならないかは、自閉性障害
児者の場合でいえば、障害の軽重ではなく、どの様な教育をなされてきたかで就労
が出来るかどうかが決まっていることが多い。
例えば、水遊びが好きな子であれば、水遊びからお米をといで炊飯器を操作して炊
く、お風呂洗い、洗濯などを出来るようにして、それを家庭生活のリズムのなかに
組み込む。その仕事をすることで皆に認められ、評価してもらうことで思春期のプ
ライドが充足され、思春期パニックなどを自分の力で乗り越えることが出来る。
そして、称賛されることで自信と次の新しい事へのチャレンジヘの意欲が沸いてき
て、予想した以上に自立した生活や発達をとげている障害児者が数多く出てきてい
る。色々な経験を積み重ねることで、自分自身でどの様にしたらよいかを考えられ
るようになり、新たなる発達を生み出している子もいる。
B体全体を使った取り組み
リズム遊びや、集団での遊びを大切にする。障害を持った子どもの多くが、足腰、
手指の発達が遅れていることが多い。遅れたところを「訓練する」という面だけを
全面に押し出すのではなく、子どもの自主性を伸ばすという面を大切にしながら、
遊びに置き換えてやることを考えるべきである。物を作りだす手は、足腰がしっか
りしたときに初めて、体のバランスをとるという役目から開放され、本当の意味で
の手の動きが始まる。手指は、小指から発達していき、親指と人さし指との対向で
発達が終わる。足裏の土踏まずの形成は、6歳ごろ完成し、手指を体のバランスを
取る役目から開放することによって、変化する素材をいじることで、興味を外界へ
向けさせる働きを促進させる。外界へ手指が働きかけることは、脳の言語野を刺激
することにもなる。
リズム遊び(1.腹這い…わに、へび 2.四つ這い…いざり、はいはい、ライオン歩
き、尺取り虫等 3.走歩行…けんけん、スキップ、ギャロップ、うさぎとび、手押
し車、トンボ)、散歩、ジョギング、手遊び、トランポリン、ブランコ、滑り台、
自転車遊び等をすることで、子どもの興味の広がりと体の発達をはかる。
C指を十分に開かせる課題
・変化する素材を使って、内側に向いた心と指(手を握りしめていたり、はいはいし
た時、指が伸びないで内側に曲げている等発語の無い子や自閉性障害児に多い)を
外に向けさせる。
・砂、水、粉、米等を素材にして、道具をあいだに入れて手と目の供応をはかる。
ハサミを使ったり、カッターを使ったりしての簡単な紙工作や切り絵をする。折り
紙をして、指先に力がつくようにしながら、折り方の図を見せて見通しをもって折
り紙をできるようにして、物事を見通せるようにさせる。手の動きを分化させて、
やがては絵を描けるようにする。
・絵を描かせるときには、楽しい遊びや学習したあとなどで描かせると、意欲的に描
く。実際に動物などを見たり、触ったりしてイメージ化をしっかりとさせてから描
かせると面白い作品が出来る。体を動かしながら、知識を豊かにしていくことで、
知識が自分のものとして定着していく。子どもたちがサツマイモや苺を作るための
畑を貸してくれる地域の人や、畑の作業を一緒に手伝ってくれる子どもたちを教師
集団や保護者で作りだす。これが、地域に生きるということの一つである。
Dコミュニケーションの力を育む
障害児学級や養護学校は、日本語を大切にする教室です。言葉を大切にして、言葉
を子どもの体の隅々まで、お風呂に入った時お湯が身体中にしみ波るように、かけ
てあげましょう。やれば出来るという自信をっけさせ、ゆったりした取り組みで、
成功したら大きく評価してあげましょう。教師や保護者は、子どもの現状をしっか
り把握して、発達課題を正しく把握して学習を進めるべきである。
(3)交流教育について
@交流学級とどのように交流するか、何のために交流するのかをしっかりと確認して
取り組む。その子どもの到達点と能力とを考えてやらないと、一方が一方へ「○○
してやる」してあげる関係になってしまう。つまり、お互いが対等に学び合う関係
(交流)ではなく、一方から一方への片道通行の直流になってしまうことになりか
ねない。両者(健常児と障害児)が、お互いに学びあえる対等な関係になることが
大切である。障害児は、自分の要求が出せる集団でないと、後退したりパニックを
起こしたりする事があるので、注意が必要である。
A学校行事への参加
単に学校行事に参加すればそれでよいのではなく、参加してどうするのかの内容が
大切である。子どもが参加して、十分に力が出せるように内容を考える必要がある
その場合、その学校の職員集団の教育的な質の問題が出てくる。つまり、子どもに
合わせて、教育内容を適切に変更する勇気と実践力が必要になってくる。
B合科の学習内容や交流教育等、保護者への呼びかけの文などについては、資料を参
照されたい。
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