おしまコロニー星が丘寮 寺尾孝士
はじめに
・星が丘寮=知的遅れの重い自閉症の青年・成人期の人たちが利用
入所時点で様々な問題を示していた。
ごく基本的なところでは身辺処理の技能が身に付いていない。
技能が身に付いていても実際の場面で適切に使うことができない。
地域の中で暮らしていく時に、当然身につけていなければならないルール
等もほとんど身に付いていない。
いやだということを表現するにも、伝えるのではなく拒否行動やパニック
というような不適切な表現方法を使ってしまう。
言葉の理解も性格ではない。
働くという概念や、余暇に関する技能を身につけている人はほとんどいな
い。
全体的に身勝手→家庭や地域社会で当たり前の生活を送ることが困難
↓
多くの場合、不適応行動とか「出来なさ」ばかりに注目されてしまう。
これからの彼らの長い人生の歩みを考えた時に、一人でできることは他人の手
を借りないで、必要に応じて適切な支援を受けながら、自立して暮らしていく
ことが重要
星が丘寮の概要
年齢別状況
20〜24歳 25〜29歳 30〜34歳 35〜39歳 40〜44歳 合 計 平 均
男 8 24 14 1 1 48 28.1歳
女 4 5 2 1 12 26.8歳
計 12 29 16 1 2 60 27.8歳
知能指数別状況
測定不能 0〜19 20〜3S 合計
男 16 19 13 48
女 4 8 2 12
計 20 25 15 60
寮構成
【利用者】−〜四寮:各寮男性12名 五寮:女性12名
【職 員】一寮:2名(副担2名) 二〜四寮:各三名(副担2名)
作業班構成
【空き缶班】 利用者:19名(内実習1名) 職員:2名
【ウニ箱班】 利用者:23名(内実習5名) 職員:2名
【〔製函 班】 利用者:19名(内実習2名) 職員:2名
【実 習 班】 利用者:終日7名 パート8名 職員:2名
実習班構成
実習先 出勤日 勤務時間 仕事内容 人数 年齢 IQ 備考
龍杉創 6/遇 11:00〜16:00 食器洗い 1 31 15 A
清掃等
男爵資 5/週 9:00〜15:00 除草、除雪 1 24 29 B
料館 清掃
のとや 5/週 12:00〜14:30 食器洗い 3 25〜31 15〜26 C
収納等
グラス洗い 1 29 26 D
削り券作り 4 24〜31 測不〜15 E
キノコ 5/週 9:30〜16:30 培地整理等 5 24〜31 16〜27 F
センター
A:必要に応じて職場側と環境調整等を行うなどして、職場側の協力を得ながら
一人で通勤し実習を継続している。
B:Aと同じスタイルの実習であるが、通勤途上の問題があるため、職場側と施
設側の送迎で実習を継続している。
C:のとやグループは同じ車で出かけるが、仕事場では職員の直接指導は受けず、
従業員とともに働く。 必要な時は職員の援助を受けることができる。
D:職場では一人だけ離れた所で従業員の中で働く。
E:職員の継続的な支援・援助の下で働く。
F:職員と車で出かけ、職員の継続的な支援・援助の下で働く。
取り組の実際
1.評価・観察
・評価:生活場面に関すること、社会的活動に関すること、仕事に関すること
「合格」「芽生え」「不合格」
・観察:何に興味を示すのか
どういうところが強いのか
どういう配慮をすれば注意を向けることができるのか
声がけで理解できるのか
同じことでも場面が変われば分からなくなるのか
何に不安や混乱を示すのか
どういう状況だと安定して物事に取り組めるのか
動機付けになるものは何か
理解できるようになるまでの期間はどれくらいか
2.個別目標の設定
・利用者一人一人について、障害特性や機能レベルに応じて長期目標を決め、
その目標を行動分析し、一つ一つの行動項目の達成度を評価・観察し短期目
標を決める。
・個別目標は利用者偶々の発着的適切性、機能性、自立性の視点から、内容は
身辺処理に関したもの、家事行動に関したもの、余暇活動に関したもの等多
岐にわたっている。
・作業活動に参加している場合も同じように個別目標が設定される。
3.物理的構造化
・一つの場所を多目的に使用しないようにしている。
・課題を行う場合、注意といったことに問題を示す場合は、余分な刺激を排除
するために衝立をたてたり、壁側に向かって行う等の配慮をしている。
・掃除をする場所も、床を色ビニールテープで区切り、どこからどこまで掃い
たり続いたりすればよいのかが分かるようにしてある。ゴミを集める場所も
色ビニールテープで小さな四角を作り示している。
・自分の洗面道具、課題用具等の置く場所も決められた棚や、色別のかご等で
明確に視覚的に分かるように配慮している。
・作業場面においても、個々の障害特性や機能レベルに応じて、机の位置や衝
立、座る場所等が配慮されており、集中して仕事ができるようになっている。
4.スケジュールの提示
・生活場面、作業場面等において「いつ」「何を」「どこに」等を、スケジュ
―ルシステムで示している。
・スケジュールの内容:個々の理解のレベルに合わせて、絵、文字、写真や具
体物等
・スケジュールの量:一日全部、一日の部分、一つの内容のみ等
5.ワークシステム
・生活場面(身辺処理、家事、余暇活動等)や作業場面において、「何をする
のか」「どのくらいの時間ないし量を行うのか」「いつ終了するのか」「終わ
った後何があるのか」等を、絵、文字、写真等で示すようにし、一人で自立
して取り組めるように配慮している。
・利用者一人一人の課題遂行レベルに合わせて、「左から右のシステム」「色
合わせのシステム」「シンボルによるシステム」「文字によるシステム」等
を配慮している。
6.タスクオーガナイゼーション
@コンテクストの提示
言葉による提示のみでは、利用者が何をして良いのか分からない場合、それ
を行う場面や前後関係を示したり、使用する用具を見せて何を行うのかを具
体的に理解できるようにしている。
A一対一の対応
一対一の対応により、同じということや数的な処理の理解が非常に困難な重
度の人たちに対しても、一人で課題が遂行できるように配慮している。
B左から右の系列
課題をいっも左から右に進めていくことで、習慣的に課題遂行手順を分かる
ようにしている。
C身辺処理、家事、余暇活動や作業等を行う場合、絵、写真、文字等を単独、
又は組み合わせて用いそのやり方を示していくようにしている。
ジグを作成する時は、理解の程度(何でどのように示されると理解できるの
か)を配慮している。
7.コミュニケ←ション
・こちらが期待していることを伝える時には、一人一人の理解できる力を配慮
している(何が彼の理解の助けになっているのか評価・観察)。
・癇癪や自傷等で表現するのではなく、周囲の人たちが分かる方法で要求やヘ
ルプ等ができるように配慮している。
8.その他配慮したこと
・仕事や課題に取り組んだことができないという結果を招いてしまわないよう
にしている。できるだけ成功に導くように援助している。
・ジグは、職業的な課題だけでなく、洗顔や歯唐きの手順等の身辺処理や余暇
場面でも活用するようにしている。
・どのように関わっていくかは、利用者の状況によって検討し、いったん方法
を決めたら関わる人が変わっても同じように進めていくようにしている。
・その利用者が身につけている生活上のスキルを基盤として、大幅な修正を加
えないようにしている。
・新しいことを教える時は一つの内容のみとし、安定した状態になるまで基本
的に教えないようにしている。
・一人でできること、援助しなければならないことを明確にし、職員全員で確
認の上、関わっていくようにしている。
以上