きずなへ
平成14年度 国庫補助事業・在宅重度障害児集団療育事業
自閉症協会奈良県支部療育キャンプ
2002年11月23日(土)〜24日(日)国立曽爾少年自然の家(奈良県宇陀郡曽爾村太郎
路1170)п@0745-96-2121で使われたレジメ
平成14年ll月23日
MaBAシステム
中野 弘治
臨床動作法からのアプローチ
≡ からだほぐし・心ほぐし ≡
1、動作(姿勢)と心
人は、日々からだを動かしながら生きている。何か心配事があったり、不安で気持ちが
落ち着かない状態になると、からだの動きもそわそわした心もとないものとなってしまう。
また、ストレス場面で緊張している時は、いつの間にか、からだも硬くなっていくことが
多くみられる。そうした不安定で緊張した状態が続くと、からだの隅々にうまく心を及ば
せることができなくなり、日常の動作もぎこちなく、自分の行動そのものが不確かなもの
となっていく。
人の姿勢もまた、心の状態と大きく関係していると考えられる。例えば、自宅でくつろ
いでいる時や、公園のベンチで春の日差しをいっぱい浴びている時など、顔を上げからだ
の緊張を抜いた姿勢をとることが多い。このような姿勢は、外界からの刺激を受け入れる
ことができる開いた姿勢と言える。一方、不安や悲しみがある時や考え事をする場合など
には、上体を前屈みにさせ、背をまるめるような姿勢をとることが多い。このような姿勢
は、外界からの刺激を制限する事ができる防衛的な姿勢であり、自分の内面に意識を向け
やすい閉じた姿勢と言える。
このように、心の状態が姿勢に影響を及ぼすと同時に、姿勢からも心の状態に影響を及
ぼすという相互作用があるのではないかと考えられる。
2、動作とは
「椅子から立つ」という人の動きを考えてみれば、何らかの理由から、からだの持ち主
である主体(自分・自己)が立とうという意図を持ち、立つための無意識的レベルを含む
プランニングを行い、自分の持ち物であるからだに対して命令を発し、ある種の努力を行
った結果として椅子から立ち上がる。このようなからだの動きの多くは、心理的なプロセ
スが介在して生じるものであり、主体の活動とは無関係にからだが勝手に動いているので
はないことがわかる。
このプロセスは、「意図」−「努力」−「身体運動」と図式化することができ、意図と
努力の結果としての身体運動を「動作」と呼ぶ。なお、ここでの努力は、歯を食いしばっ
てがんばるという意味での努力ではなく、ある種の「心の活動」を行うことを意味する。
3、動作法の実際(からだを通したコミュニケーション)
からだを通した働きかけは、言葉によるコミュニケーションが難しい場合にきわめて有
効なコミュニケーション手段となりうる。援助者との共同作業課題として設定される動作
課題は、知的程度に関わりなくからだの実感としての達成感・成功感が得られやすい。
【肩のリラクセイション】の場合(椅子坐位・臥位)
@
どのような動作をすればよいかの設定・提示(トレーニーと援助者の位置関係を工夫
する)
A
トレーニーが一人でからだを動かしてみて、不必要な緊張が入ったり、狙った動きが
できない自分に気づく体験。
B
トレーニーの肩に手をあて、課題の動きに沿わせるように、動作を誘導する援助の共
同作業体験。(「〜しましょうね」と声をかける)
C
動作中の微妙な動きの引っかかり、左右の動きのわずかな違い、背中の不必要な緊張な
ど、乗り越えることができる課題の設定・提示。
D課題の乗り越え体験による成功感・達成感、自信と信頼感の形成。
E上半身のリラックス感の確認。(心地よいリラックス感の体験)
援助者の心がけとしては、あくまでからだを動かしたり弛めたりするのはトレーニー本人
であり、柔軟体操的に強引に力を加えることなく、相手の動きに沿わせ、からだを通した意
志と意志のキャッチボールをするつもりで働きかけることが大切である。
4、からだほぐしの動作課題例
(1)リラクセイション課窟
・側臥位でゆっくりと上体をひねるように動かす。(躯幹のひねり)
・側臥位での肩・頸部位をゆっくりと伸ばす。
・仰臥位でゆっくり腕をあげることで肩の力を抜く。(腕あげ動作)
・坐位姿勢(椅子坐位)で肩を後ろへゆっくり反らせる。
・坐位姿勢で背を後ろへゆっくり反らせる(上体反らし)、またはゆっくりまげる。
* リラクセイション課題のねらい
リラクセイションは、慢性的な筋緊張部位を弛緩することができるようになるための援助で
ある。この援助は、援助者と共に力を入れたり抜いたりすることで、筋緊張を弛緩すること
ができるようになり、リラックスした自分のからだを実感することをねらいとする。
(2)動作のコントロール課題
・坐位姿勢(椅子坐位)で腰(骨盤)をたてる。
・膝立ち位での直姿勢づくり。
・立位での直姿勢づくり、姿勢保持。
・立位姿勢で左右に重心を移動する。
・立位姿勢で一歩踏みだし、前後に重心を移動する。
・立位姿勢で膝のまげ伸ばしをする。
・歩行
*動作のコントロール課題のねらい
適切な動作の修正・改善または、動作の習得を目的とする。同時に動作の修正・習得に
伴って、自ら楽に動かせるからだを実感することをねらいとする。
参考文献:
『痴呆性高齢者の動作法』 中島 健一 中央法規出版
『高齢者・障害者の介護』 金井一葉・中島健−・下垣光 中央法規出版
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