1.0才〜1才 生活年齢で表していますが、障害児も基本的には同じ発達の道をたどる。
(1)言葉獲得前期の子供で、指さしやなん語を獲得する時期である。聞き言葉を中心に、
理解言語を増やす時期で、はうことなどを充分に保障し、体の幹を作る時期です。
直立することによって、世界と自己との最初の分裂がもたらされると言わる。
(2)目と手の共応を育てる事が大切です。握る、破る、ひっぱるなどの活動を充分にさせ
る。親子で体を使っての遊びを充分にし、相手をしてもらうのが楽しいという、人間
に対する信頼をかちとる取り組みを充分にする。特に、自閉性障害児はこの点が弱い
子が多いので重視して欲しい。ゆったりとした語りかけをして、日本語のお見呂に…
2.1才〜2才前後
言葉を徐々に獲得する事によって、周囲の人々との新しい結びつきがもたらされる。
母親等の悪りかけから、聞き言葉を土台として、話し言葉を獲得する時期の子である。
(1)1才2ヶ月
囲いボールペンなどを持って、かたを上下して、トントンと書く(?)
画面を見ない事が多いが、やがて見ながら線の往復が始まる。
子どもの顔を見ながら、ゆっくりと語りかけ、お見呂で全身にお湯がし
みわたるように、日本語のお風呂に入れましょう。短い言葉で、簡潔に
愛情を込めて話しかける。
(2)1才5ヶ月
まだまだ頼りない、か細い線ですが、肩と肘を軸として、弧状の往復運
動が出来るようになります。この頃は、なるべく書く道具は固いものが
よい。弧を描き、旋回する力と、上下に動くカの二つに分けられる。
小さな紙ではなく、なるべく大きな紙にゆったりと描かせたいものであ
る。丈夫な広告の裏の白い紙等でもよい。
(3)1才6ヶ月
往復運動から、だんだん丸みをおびてきて、丸が見えるようになります
美術教育を進める会では、『ぐるぐるまるへ』とよんでいます。肩と肘
との2点が、共応を始めたから出来るのです。この時期が、長い子が障
害児の場合は多いが、満足するまで描かせることが大切である。
(4)2才前後
ぐるぐる丸を意識してかいている。まだ『お母さんを描く』というイメ
ージは無く、手の運動(手が機関車)に先導された活動である。
「手や運動感覚の生理的な成熟と、その発達に支ええられた変化の過程
である。質的転化の過程ではない。………新見俊昌」
3.2才〜3才前後(3才の節・意味づけ期)
はなしことば獲得期で、一生に使用する大部分の言葉を獲得する時期にあたる。
子どもの発達における第1期の締めくくりとして、思考の最初の芽生えが生じる。
ぐるぐる丸から閉じた丸へ、描いた丸を『お母さんだ』というように、言葉で意味をつ
けるようになります。質的転換期で、急激に変化発達します・生活体験を豊富にする。
(1)2才6ヶ月
単なる手の運動の線から、具体的なイメージとが結びつけられ始めます
しかし、まだ手の動き(ぐるぐる丸)が先で、できた丸に自分の身近な
物のイメージをくっつけるという、後から意味づけをするという時期で
す。この時期は、量的にたくさん描かせることが大切です。縦への発達
よりも、横へ奥深く太らせる時期こ当たりますので、焦らないで楽しい遊びの1つとし
て十分にぐるぐる丸を描かせましょう。
(2)2才7カ月
ぐるぐる丸から閉じた丸へと、だんだん閉じた丸が見られるようになり
ます。そして、ぐるぐる丸でも、保育園の通園バスのつもりの、大きな
ぐるぐる丸、乗っている友達のつもりの小さいぐるぐる丸、というよう
に『つもり活動』が出来るようになります。
まだ、具体的なイメージを形(この場合はバス)に表現出来る段階ではありませんが、
描画の活動が子供なりの目的を持つ活動に転化してきます。大変重要な変化です。
この時期は量的に多くのぐるぐる丸をかかせ、イメージをうんとふくらませてやること
が、とても重要です。なるべく大きな紙に、伸び伸びと書かせて欲しい。
◎指導者や保護者が注意することとして
@すぐに形のある物を描かせようと無理に引っ破っていかないで、ぐるぐる丸でうん
と遊んで子伏の生活を語らせます。そして、共に遊ぶ中で共感関係を育てる事と、
次への飛躍のための、手の動きと心を太らせることこそ大切にして欲しいものです
A自閉性障害児など障害をもっている子は、この時期を乗り越えるのに時間がかかる
この時期は、砂、混、粘土、水、などの子供の働きかけでたやすく変化する素材を
使った遊びが、子供の意欲と言葉を引き出す。イメージを豊かにふくらませ、言葉
の世界を楽しませるためにも、絵本などの読み聞かせを大切にする.この時期にな
ると、線の痕跡の違いをハツキリさせるために、意識して色を使い分け始める。
(3)3歳2ヵ月(ファンファーレ)
『閉じた丸が画面いっぱいに展押する姿こそ、イメージによる表現の幕あ
けをつげるファンファーレである。新見俊昌』
この時期の子供は、集団での遊びの楽しさがやっと分かってくる頃です。
ですから、この時期の子供には豊かな生活経験や特に変化する素材を媒
介にして親や療育者が一緒になって遊んでやることで、豊か心とイメージを育てるこ
とが大切です。親子遊びや、絵本などの読み聞かせで、子どもの豊かな感情を育てる。
絵本などの読み聞かせでは、次々と本をかえてやると好きな本が出来ない。何回も読ん
でやっているうちに、内容を理解して、好きな本が出来てくる。
・閉じた丸は、出発(過去)と柊わり(現在)が理解できたということで、2次元形成の
時期に当たります。大きな丸の中に更に小さな丸を入れて意味づける(ここでは先ずイ
メージが先にあり、それを表すのに丸で描くというように、明らかにイメージが手の活
動より先になっている。)ことは、今まで手が機関車の役割をしていたのが、ここから
は明らかにイメージが機関車になり、手がイメージに引っ張られて、後からついていく
客車になるというように、反対になります。これを質的転換といいます。
・障害者の場合には、この時期の「○○にみたてる」という面の弱い子が多い(特に自閉
性障害児)ので「みたて、つもり活動」を遊びの中で積極的にやらせたいものです。
友達や親と積み木などを使って、汽車や自動車にみたてて遊ぶ「ごっこ遊び」を重視し
小集団で十分に遊びきらせましょう。
・この時期は『形を認識したり、弁別したりすることは出来ても、それを描いて表現する
ことはまだ出来ない。新見俊昌』という発達段階であることを知っておくべきである。
ですから、指導者としては、形を描くことにあまりこだわらないで、自由な発想と表現
を大切にしたいものです。子ども自身のイメージを大切にして、豊かに膨らませる活動
を充分にさせましょう。
・「こう描きなさい」というような形だけを、おしつけて教えないことです。
この時、描き方の方法だけを教えると、特に、自閉性障害児は、パターン化した絵にな
り、自分のイメージで絵を描けなくなります。そして、パターン化から抜け出すのに、
とても長い年月が必要になります。
縦だけの発達だけでなく、横、奥行きのある発達も大切です。
ここでは、指と心を育て自発性を発揮出来るようにしむけてやるのが指導のポイントで
す。大人も子供と一緒になって丸のファンファーレを描いて、子供の意欲を引き出させ
ましょう。ゆっくりした生活リズムの取り組みのなかで、絵本の読み聞かせや、わらべ
うたでの手遊び、絵かきうた等の日本語の持つリズムを大切にした、語りかけを大切に
しながら描かせましょう。あせってはいけません。
(4)3才6カ月 お母さんの顔のファンファーレ
お父さんの顔のファンファーレ
それらしい輪郭は出来てきていますが、まだ本人に聞かないと、なか
なか誰を描いたのかはわかりません。描いたときの日時や、喋ってい
た事等をメモ的に、作品の裏などに記録しておくと、後で参考になる
(5)3才11カ月
大好きなお母さんの顔
口、鼻、目がきちんと描けるようになってきます。
3才児後半になり、3才の節を越えると、自分の描いた絵について、お
話が出来るようになってきます。形にあまりこだわらず、豊かに描いた
絵で、自分の心を話せるようにすることが大切です。
・自閉性障害児で、言葉の無い子や少ない子には、特に絵を描かせることで、内なる世界
から」手子供を外なる世界へと、自分の心を表現出来る力をつけてやることが大切です。
心の中を、言葉のかわりに絵で表現出来る力をつけてやることが、言葉の少ない子ほど
大切なのです。絵で感情や意思を表現できるようになると、パニックなどは減ります。
そして、親や療育者は、子供のかわりにその絵をどのような言葉で表現するのか、子供
に動作等も含めて、言葉での表現の仕方を教えてやる。子供が覚えて、相手の人と使え
るようにして欲しいです。但し、訓練的にしますと、嫌がりますので、楽しみながら、
遊びながらするのが良いでしょう。
この3オの節を越えるところまで発達させておけば、大人の援助と指導があれば、自分
の身のまわりのことは、かなり出来るようになります。就学年齢を迎えた時、発達年齢
が3才の節をまだ越えていない子は、多くの場合養護学校入学に該当する子が多い。
4.4オから6オまで(知的リアリズム期)
この時期の子供は、描くなどの表現力が飛躍的につく時期ではなく、表現力が横に太っ
て行く、奥行きが深くなる時期にあたります。はなし言葉をより一層豊かにして、読み
言葉、書き言葉の獲得へと向かおうとする時期なのです。
◎知的リアリズムとは
・自分が知っているように、概念的に、図式的に描くということです。目に見えるよう
に描くのではなく、自分で理解しているように描くことです。
・知っている真実を描くこと、土の中に埋まっているさつまいも(実際には見えない)
をこういうふうにあるよと、見えるように描くことなどが特徴です。
(1)4才前後
この時期になると、盛んに1人でしゃべりながら身近な人(お母さんや
お父さん、先生や友達)を描きます、また、描く量も飛躍的に増えます
面白いことに、未だ身体全体を表象するだけの技量が身についていない
ので、人物の顔を大きく書き、胴体が無く、手や足は顔から直接付いて
いるように表現されています。しかし、顔だけに興味が向いていたのが体全体へと興
味や関心がひろがり、一定の表現もついて来たことは、大変重要な変化です。この時期
の絵を、頭足人(とうそくじん)と呼んでいます。両足は固定されていることが多いが
両腕ははじめから自由に動いている。新しい要素として、感情の世界とともに、色彩の
世界が絵のなかに入って来て、自分なりの色彩の象徴言語を見つけ出しはじめる。
(2)4オ4カ月
友達、上下の区別はまだ出来ず、友達の顔も羅列的に並べられていて、
基底線もまだ出てきません。子供の絵だけでは理解出来ませんので、こ
の時期には療育者が、子供の話を聞くことによって、絵の内容ををより深
く理解することが出来ます。聞き上手の親や療育者であってほしい。
(3)4才11ヵ月
5才前後になると、基底線が出てきて、人と物、人と人の関係が絵を見
ただけで、ある程度分かるようになります。この時期は必ずと言って良
いほど上を表す太陽が描かれています。このことはとても重要なことな
のです。上下が分かり、系列的な絵になってきます。この時期に、太陽
を描くことは日本の子どもだけでなく、人類共通の表現のようである。
小学校になっても、まだ太陽が絵に出てくる子もいますが、その子の発達がまだ5才前
後にあるのであって、強制的に止めさせるよりも、その他の発達を促すことが大切。
5オになる時期ぐらいまでは、多くの子どもたちは、正面から見た顔の構図にこだわり
続けます。横顔が出てくるのは、顔はで正面を向いているのに、鼻だけは横向きについ
ている絵も、この時期には現れます。
(4)5オ1ヵ月
幼稚園で行ったさつまいも堀りの絵.まさに自分で体験したことを知的
リアリズムの目で表現しています。いも掘りの時の事を聞いてみると、
「さつまいもがいた。」という言葉で表現していました。「いもがいた
。」という表現がいかにも子どもらしくて、素敵ではありませんか。
(5)6才1ヵ月
6才前後になると、文字に興味を持ち、読んだり、書いたりするように
なってくる.この時期になると、絵にも男女の違いが現れてきて、女の
子は、人がいて家庭的な平和な内容が多くなり、男の子は、観察的な絵
の内容で、昆虫やザリガニなど精密に描き、科学的な絵が好きになる。
5.書き言葉の世界へ
この頃は小学校に入り、はなし言葉の世界から、書き言葉の世界になります。障害のあ
る子には、また1つ高いハードルを越えなければならない世界です。
幼稚園などの世界は、話し言葉を中心とした世界ですが、小学校にになりますと、同じ発
達段階ですが、書き言葉を中心の世界になりますので、落ち着いて座っていられない子
にとっては、大きなハンデキャップを背負うことになります。
幼稚園や保育所での生活の時には、余り目立たなかった障害を受けている子ども達も
皆が椅子に座っての学習になると、ついていけなくなり目立つようになります。
小学校への就学に関しては、専門家や学校の先生によく相談して、その子が一番伸びる
可能性の大きい場にいれてやるのが望ましい。その場合には、総合的な発達が分かる本
人の書いた絵を、是非とも参考にすべきである。
・障害のある子どもが、言葉や内容を友達から学びとれる人数は、8名を越えると無理で
あるという調査結果がある。ですから、言葉がないから普通学級へ入れば、言葉を覚え
られるのではないかというのは無理があります。むしろ逆に、自分の分からない言葉で
色々と言われるので、不安からパニックを起こして退行する子どもが多いという現状が
ある。
- 小学校1年生
運動会の絵ですが、からだの各部分は、まだ統一的には義弟が出来てい
ません。1〜2年生は、書き言葉がまだ充分には身についていないので
この時期の子供には、絵日記を書くことは、絵と言葉の不十分さを、両
方で補いあえるので子供の心を表現させる為の、とても大切な学習です
◎自閉性障害児の場合には、このあたりまでに、すでに言葉の遅れが非常にめだって来
ている。そこで、漢字や文字を好きな子が多いのに着目して、絵日記を書かせ、言葉
の使い方や表現の仕方を学ばせることが必要です。
特に形容詞や助詞の使い方を教えることが大切(自閉性障害児はここが不得意)です
接続詞も、絵の説明文を書く時に教えることが出来ます。この場合も、基本的には、
子供が経験したことを、楽しみながら、遊びの1つとして描くということを崩さない
ことが大切です。
この時期の子供は、自分の経験したことを時間を追って書けるが、主題にIそった作文
はまだ書けないようである。また、自分が中心であり、他の子の事を客観的に見るこ
とはできない。自己中心の世界で「他の人の身になって考える」ことは、まだ出来な
いので指導もそれを考慮に入れてすべきである。
6.9オの節(大きな質的転換期である)
自己中心の世界から抜け出して、集団の中の1員として行動出来るようになります。
そして、自分達で集団をまとめていけるようになります。自分たちでル一ルを決めて、
自分たちでグループを統括する力がついてきます。このグループ内での約束ごとは、親
との約束ごとよりも、優先する場合が出てきます。
・内言(頭の中での独りごと)をして、部分と部分、部分と全体との関係などを比較した
り、関連づけたり出来るようになります。
昨日(過去)と今日(現在)の経験や学習から、明日(未来)はどうしたら良いかなど
と、第3次元の世界も理解出来るようになり、作文も主題にそった内容が書けます。
つまり、子供の世界から、大人の世界への出発点にあたる時期です。
自分のことだけでなく、他人の事とも比較できるようになり、「あなたがその立場にな
ったら、どう感じますか。」という問いにも答えられるようになる。
今まで買い物に出かける時は親の傍に、必ずくっついて来た子が、4年生ぐらいから、
パッタリと来なくなる。4年生(9才)の頃から親から離れて行くのは、自分の意志で
独り立ちし始めた証拠であり、9オの節を乗り越えられたからである。
障害児や自閉症児は、この節を乗り越えられない子が多い。しかし、6オぐらいの
表現と技術が身についていれば、将来自立した生活をしていく能力は充分にあります。
また、実際上自律した生活を送っている自閉性障害児者も出てきた。
・幼児期に保護者や保育者と、しっかりと遊びきった子や体験の豊富な子は、色々な問題
や判断を要求される場面に出くわしても、様々な経験から自律的な心が育っているので
この節をわりと楽に乗り越える事ができる。親の言うことに従ってばかりいた、比較的
聞き分けの良い子といわれる子どもも、この時期になると、自分の意思や要求との高ま
りと、親の言うことを聞かなければという、2つの相反する事態の中での心の葛藤から
不登校になる子どもたちも出てくるので注意が必要である。
3年生の自画像
(9才を越えた頃から14才ぐらいまでを、視覚的、感覚的リアリズム 期と言う)
自分を書く場合で、対象となる自分をしっかりと見て、視覚に写る様子
をしっかりと見て、なるべく忠実に描こうとする.部分の観察、全体の
バランスなども、内言しながら細かく描いている。3年生の後半ぐらい
から、教科書もそれまでの具体的な事柄から、半具体的、抽象的な教材へと変化してき
ます。生活経験の多いことが、学習の展開に大きく関わりを持ってきます。
(2)6年生の自画像
版画ですが、さかんに内言、外言しながら彫った絵で、自分を客観的に
とらえ、自分の顔の特徴をかなり良く表現している。本人に似ている。
自分なりの性格をも、何とか表現しようと始めるが、まだ技術的に無理
である。
(3)中学1年生
やや年らしくなった顔の表情をしているが、表現は6年生の頃と、そ
れはど大きくは変わっていません。
気持ち的にも、まだ幼さを残している部分もある。
7.15才の節(中学3年生)を越えて、思春期に入り、リアリズム期と呼ばれる大人の世
界です。自分とは何かなどと、自分の内面的な精神的な世界へ心が向いて来る時期です
何のために生きるのか、自分は何なのか、どんな特徴があるのかなどの、内面的な精神
的な物を絵で表現しようとしている。
同じビンを描いても、15才前の物とは全くちがって、その物の持つ特性をしっかり捉
え、自分の主張を表象しようとします。人類の造り出した文化、芸術と真剣に対応出来
るだけの能力がついて来始め、表現や意思を学ぼうとする意欲が出てきます。文学作品
や、芸術に興味を示し、その中に自分の生きる道や意義、一存在価値を見つけ出そうとす
るようになります。しかし、まだ技術的には発展途上である。
(1)高等学校2年生 中学1年のビンとは表現が大分違っている。自分が
感じたビンを、自分独自の表現をしようとしている。(絵は略)
18オの自画像.自分を客観的に捉えて、内面や性格を表現する。
芸術等に対して興味を持ち、自分も近づこうと努力を始める。
専門的な勉強や、将来の事など悩む時期で、気持ちの振れが大きい。
8.大学4年生
自分を表現しようとするだけでなく、芸術的にもより自分を高めようとして、様々な物
に興味を示す。自分だけの、表現方法を見つけようとする。技術的にもそれまでの人類
の築いてきた文化を貪欲に吸収し、自分独自の表現を持とうと、新たなる挑戦を始める
時期に当たる。1人前の人間として、様々な表現方法で、自分を表現しようとする。
自分だけでなく、他人の評価などを受けようとして、卒業後個展などを開いて、自分の
主張を理解してもらおうとするようになった。(絵は略)
☆以上が健常児の絵の発達の一応の道筋です。載せた作品は、私の子どもの絵を25年か
けて追跡し、中心に載せましたが、障害児や他の子の作品も沢山参考にしました。
V 絵を重視した家庭生活や学級経営を
1.障害児学級の子どもや、養護学校、幼稚園や保育所、家庭等での絵も、かなり沢山見
てきました。障害を受けている子も、発達の筋道は同じであるという事を確信しました
障害児はなかなか絵を描くまでには、時間のかかる子も多いですが、縦の発達よりも、
奥行きのある横の発達を重視した取り組みを重ねると、やがて縦の発達が促進される。
くどいようですが、障害児(自閉性障害児も含めて)も、基本的には鍵常児と全く同じ
発達の道筋をたどります。ただ、3才の節、9オの節、15才の節など、大きな質的転
換期で障害のためにつまずいている子、又は時間がかかっているだけなのです。
ですから、私たちはその子の現在の状況をしっかりと捉えて、どうすればその節を乗り
越えられるのかをきちんと把握して、指導していくことがとても大切になって来る。
その為にも、言葉の発達の道筋を知り、体と手持を発達させ、心の表現や要求を育て、
言葉や絵や文で表現する道筋をつかみ、子供に実践でかえしてやることが、今最も求め
られています。ティーチプログラム等から学ぶ面も多くあります。
2.自分の子供や担任している子供の発達を、絵を通してかなり的確に捉えることが出来ま
す。今何を教えたら良いのか、どんな手立てが必要か、言葉との関係は、友達との閑係
は、手ゐの働きは何処まで出来るか、認識はどうか等から子供の課題をはっきりさせて、
日々の教育や子育てに生かしましょう。絵からは、その子の発達の総合的な力が分かり
ます。
3.子供が描いた作品を、描いた時の様子や、話していた言葉なども作品の裏に記録してお
くと、後で発達の様子が非常に良く分かり、実践の反省と励みになりますo
4.美術教育を進める会では、障害を受けている子どもの絵のつまずきを、次の5つに大別
して研究をしています。「障害児の美術教育」美術教育を進める会 あゆみ出版『
(1)造形活動の基礎能力形成期のつまずき(生後4カ月と8カ月の節でのつまずき)。
(2)ゆたかなぐるぐる丸へのつまずき(なぐり描きの量的蓄積期でのつまずき)。
(3)なかなか形がでてこない、あるいはでてきた形に言葉で意味づけをしようとしないつ
まずき。
(4)知的リアリズム期のなかでのカタログ期(羅列的な表現・形の単語を並列的に表現す
る)から、基底線表現による統一した画面の絵の時期へのつまずき。
D視覚的・感覚的りアリズムの9オの坂道を乗り越えられないつまずき。』
W 自閉性障害児の絵の特徹と指導について
1.目で考えるという特徴について
言葉で考えられず、自閉性障害児者特有の視覚で考えることについて。
様々な実践や、自閉性障害児者自身の発言などから、私達は自閉性障害児者が、視覚を
頼りに学習をしたり、生活をしていることを実践で確かめてきた。
そして、写真や絵やマーク等を手がかりに、彼らの理解を援助してきた。全部の自閉性
障害児者がそうだということではないが、これらの特徴を披らの生活に取り入れること
で、社会生活をより豊かにする事ができる。
テンプル・グランディンは「絵で考えるのが、私のやりかたである。言葉は、私にとっ
ては第二言語のようなもので、私は話し言葉や文字を、音声つきのカラー映画に翻訳し
て、ビデオを見るように、その内容を頭のなかで追っていく。誰かに話しかけられると
その言葉は即座に絵に変化する。言葉で考える人達にとっては、これは理解しがたい現
象であろう。…中略…私は自閉症なので、情報を統合するのに普通の人があたりまえと
思っているやり方ではない。代わりに、CD−ROMのディスクに記憶するように、頭
のなかに貯めていく.貯めこんだ情報を呼び戻すときには、ビデオを 私のイメージな
かで再生するのである。…中略…自閉症についてもっともまどわせるものに、多くの自
閉症者が話し言葉に事欠いている一方で、空間視覚認知にとりわけ優れた能力を持って
いることがあげられる。」と述べている。さらに、私達が名詞を自閉性障害児者に教え
るのは、わりと易しいが、その他のことはなかなか教えにくいことを「自閉症者たちは
絵にして考えることのできないものを学習するのは難しい。自閉症児たちがもっとも簡
単に覚えることが出来るのは、絵に直接結びつくような名詞である」と解説している。
2.自朗性障害児は、パターン化した絵ばかり描いたり、地図や天気予報の記号や交通標識
ばかり描くことが多い。また、自動車や電車、電気製品等は細部まで詳しく描くのだが
人間がなかなか登場しなかったり、登場しても頭は丸で表現しているだけということが
多い。人に対する興味が出てくるにしたがって、だんだんと日常生活を反映した人物も
登場してくる。自閉性障害児や重度の障害児は、みたてる力がなかなかついていない子
が多く、この「みたてる力」がつかないと、なかなかこの壁を乗り越えていけないよう
である。
3.この「みたてるカ」をつけるための土台として、安培英子・桜井敬子氏は次のように述
べている.〔(1)〜(3)まで〕
(1)意欲
子どもたちが、興味関心のあることからスタートして、教師と楽しい、経験を共有する
ことで、人間関係をふくらませ、活動への期待をもたせたいと思います。
たとえば、手遊び、歌遊び、絵本の読み聞かせなど。
(2)運動能力と運動感覚的認識
自閉性障害児の場合、交互動作や連動させるような運動感覚の落ち込みがあるといわ
れています。
また、動作模倣の面での落ち込みも見られる子どもがいます。日常の暮らしのなかで
これらの機能が動くように訓練していく必要があります。
(3)対人関係と言語
生活面のいろんなところにこだわりを見せる子どもたちですが、特定の人との関係が
育った後は、友だちのなかに位置づくための配慮や、言語活動を学習的にプログラム
することも必要と思います。
絵カード取りの遊びは、その1例です。カードの中の事物を指して「これは何ですか
。」という質問に、答えられるようになる。このように表出する言語を、遊びの中か
ら増やしていくというやり方もあります。
4.絵を描けるようになるのには、絵本との関係をしっかりと捉えておかないといけない。
絵本を楽しめる子どもになると、絵も幅が広がり、楽しんで描けるようになる。絵本を
日常生活の一部として、楽しむことで、思考力や表現力や意欲もついてくる。
5.こめ絵の発達の順序をもとにして、障害児のなかなかつかみされない発達の段楷を、か
なりつかむことが出来るようになり、大変に役立っています。
特に、自閉性障害児は言葉の発達が遅れていますので、彼ら(彼女ら)の内面的な心の
動きをつかむのは、至難の技ですが、絵を描かせることでかなり的確に把撞することが
出来ます。また、問題行動を起こしていた子どもが、絵を描けるようになってきてから
自分の意思を、他の人に伝えることができるようになってきた。それ以来、パニックや
問題行動を起こさなくなり、非常に安定してきた等の例が、かなりの子どもたちに見ら
れるようになった。また、絵日記を書かせることで、絵の不十分さを言葉で、言葉の不
十分さを絵でというように、お互いを補うことが出来るので、障害のある子や、小学校
の低学年の子らで、言語の発達が遅れている子等には是非とも、絵日記をもっと重視し
て、指導して欲しい。
6.自閉性障害児は、イメージの世界へ入ることが、なかなか出発ません。そこで、充分に
本物に近い物を使っての『ごっこ的な遊び』をして、生活体験や言葉(発語の無い子は
理解言語を増やしてやれば、相手の言うことを理解できる。)を増やしてやる。
この過程を過ぎて、かなりごっこ的な遊びが出来るようになったら、鍵常児が幼稚園で
してきた、自閉性障害児はその時(幼稚園時代)出来なかった『見立てて遊ぶ』という
ことを、小学校などで充分に保持してやれば、大きく発達します。
見立てて遊ぶということは、自分の頭のなかにイメージすることが出来るようにならな
いと遊べません。ですから、この発達の時期が小学校で出てくる事が多いので、自閉性
障害児の小学校低学年から中学年にかけての時期は、ここを大事にして指導をして欲し
いものです。この時期のごっこ的な遊びは、より本物に近い物を使ったほうが子どもに
は理解しやすいようである。
7.鳥取大学の菅沼善弘氏は「もともと絵を描いたり、物をつくったりすることは、最も自
律的で主体的な行為であり、これほど精神の自由を必要とする活動はないといって差し
支えないでしょう。子どもが絵を描くということは、『人間を知る』ことであり身の回
りの外界を充実させていくことです。」と述べておられる。また、自分が描いたものが
友だちや大人にどう受け止められるかという、コミュニケーションの面もあることに注
目する必要がある。
8.絵を描いたり物を作る力は、決して独り歩きするものではなく、子どもの持っている知
識や表現方法や思考のトータルとして、絵が描かれる点を重視する。言葉で表現しにく
い子にとっては、最も大切な感情や意思表現の1つであることをしっかりと頭に入れて
子どもの絵と向き合ってはしいものである。それまで、自分の感情や意思をどう表現し
てよいのか分からず、イライラしたり、パニックや問題行動を起こしていた多くの自閉
性障害児が、絵を描くことで自分の感情表現ができるようになり、大変に落ちついてき
た。絵をきっかけに、相互の感情の交流できるようになり、自分を認めてもらえた嬉し
さから、人間を信頼するようになったという実践例もある。絵から絵日記へ、さらに文
字による日記へと、次々に発展させることもできる。また、絵を描けるように指導して
おけば、子どもたちが自立する時に、余暇としての趣味にもつながっていく。
9.子育ては情熱が必要です。それは子育てだけではなく、自分の人生をどう生きるかとい
うことと関連して釆ます。1度しかない人生です。悔いの残らないように頑張って、子
どもを育てましょう。感情や言葉の臨界期は、6オ〜8オまで位だと言われています。
10「子どもたちの絵は私たちに、子どもの発達を多様な変容のプロセスとして見ることを
教えます。連続する過程のなかには、飛躍的な前進もあれば、足踏み(遅滞)、あるい
は退行も観察されます。その時々の発達段楷を、一人一人の子どもの絵とあわせて見る
ことによって、子どもの個性を理解するための扉が開かれます。」 ミヒャエラ
『子どもの「なぐりがき」や「らくがき」は、幼児期の最も重要な副産物であると言え
ます。つまり、成長し、全ての身体器官を徐々に成熟させるという、重要な仕事の副産
物なのです。幼児は心と精神を、ひたすら自分の体を形成することに向けています。か
らだと心のあいだに、生命の架け橋をつくろうとしているのです。子どもの素描的な絵
のなかには、子どものからだを形成する力が表果されています。』
ヴォルフガング・シヤート
11この絵の発達の道筋こついての理論は「美術教育を進める会」の実践と理論を参考にし
てあります。特に新見俊昌氏の著書「幼児の美術教室」・ミネルバ書房の「発達7号の
・特集 3オ児一小さな意思の芽生え−ひぴけファンファ←レ・新見俊昌」からの
文章をかなり引用させてもらっています。また、新見氏の講演などの時のお話も参考に
して、私の36年間の教師生活(普通学級、障害児学級、養護学校)の実浅と自分の2
人の子どもの子育ての記録の作品を、あわせてまとめてみました。
その他に、「子どもの絵ことば」ミヒャエラ・シュトラウス著 高橋明男訳 水声社(
1998年4月発行)も参考にしています。
今回は、私の子どもや浦様のお子さまの作品、養護学校や障害児学級や幼稚園等の幼児
期から高等養護学校までスライドで見ていただきました。発達の道は、障害の有る無し
に関わらず、同じ発達の道を歩くこと。ただ その発達の歩みの速度や、発達の節を乗
り越える時の困難さ等に違いが出てくるのである。
☆子育てや教育に役立つ本の紹介
・「自閉症入門・親のためのガイドブック」バロン=コーエン+ボルトン 中央法規
・「自閉症の人たちのらいふステージ」横浜市自閉症児・者親の会編 ぶどう社
・「発達障害論」研究序説 白石 正久 かもがわ出版
・「自閉症の才能開発」自閉症と天オをつなぐ環 テンプル・グランディン 学習研究杜
・「心という名の頼り物一続・自閉症だったわたしへ」ドナ・ウイリアムス 新潮社
・「障害児の美術教育」美術教育を進める会 あゆみ出版
.「障害を知る本・こどものためのバリアフリーブック・全11巻」4月から毎月1冊発行
〔自閉症の子ども)と言う題名で10月刊行されます・小学生高学年にも理解できる。